「かかりつけ薬剤師」は「件数」を追う薬局は必ず失敗する!?ホスピタリティと収益を最大化する「算定率」の思考法

生存戦略

薬局経営者、管理薬剤師の皆さん、かかりつけ薬剤師をどのように捉えていますか?

かかりつけ薬剤師の算定は、薬局の売上を「単価」と「回転率(リピート)」の両面から押し上げる最重要項目です。また、地域支援体制加算取得への最短ルートとなり、薬局の収益の核となります。

しかし、現場からは「地域支援体制加算の算定要件だけ満たせれば良い」「まずは件数を増やせばいい」という意見が多く見られます。

実は、「件数」だけを意識する戦略には、恐ろしい落とし穴が存在します。

その戦略では、「件数さえ満たせば良い」という安易な考えが蔓延し、スタッフがホスピタリティ精神を失い、業務を惰性でこなすことに繋がりかねません。さらに、「件数」は確保されているので経営側はスタッフが怠けていることに気づきづらくなるというリスクも潜んでいます。

その結果、患者は必ずその意識の欠如に気づき、将来的な患者離れに繋がる可能性があります。

「件数」ではなく「率(算定率)」

この小さな視点の違いが、薬局の収益と組織文化を大きく左右し、将来的な処方箋枚数の増減に直結します。私が提唱するこの視点がなぜ重要なのか。そして、スタッフの意識を高く維持しながら収益を最大化するための算定率の追跡方法と、注意すべきデメリット・留意点を、この記事で包み隠さずお伝えします。

1【率で見るメリット】

まず第一に何故かかりつけ薬剤師を「件数」ではなく「率」で考える必要があるかについてそのメリットをお伝えします。

「率」で考えることで本来、薬学的管理料に分類される「かかりつけ薬剤師」を「調剤技術料」として捉えることができます。「調剤技術料」とは処方箋1枚毎に自動的に算定される加算であり「後発品体制加算」や「地域支援体制加算」などがこの「調剤技術料」に分類されます。処方箋1枚だけを見れば「かかりつけ薬剤師を算定したか否か」すなわち74点か45点(手帳あり)となりますが、視点を広げ「月」、「年」単位で見た場合。「率」で見ることで見込みの収益が処方箋枚数✕「算定率」✕「29点(74点−45点)」と可視化できます。仮に「年間3万枚」「かかりつけ薬剤師算定率5%」と仮定した場合ですと44万5千円となります。まさに点ではなく線で捉えることで経営戦略を立てやすくなります。

また、「かかりつけ薬剤師」は制度上、投薬する薬剤師を固定される事で業務の回転率に少なからず影響が出ます。回転率が悪くなるとスタッフの疲弊、待ち時間の増加による顧客不満、調剤過誤のリスクが増えます。「率」で見ることにより回転率マネジメントがしやすくなります。

そしてなにより「スタッフのホスピタリティ精神」の維持をしやすくなります。冒頭でもお伝えしましたが、件数だけで判断すると「もう地域支援体制加算の算定要件は満たしているので頑張らなくていいか」と業務を怠慢にこなすリスクがあります。私も一薬剤師として自分が担当している患者さんが本当に大好きです。「率」を意識することで「かかりつけ薬剤師を増やせないか?」と自主的に取り組み丁寧な対応をするようになります。

2【スタッフの意識を変え収益を最大化する具体ステップ】

ここまでの記事を読んでいただいて「件数」ではなく「率」の重要性について理解できたはずです。しかし、””なぜ一般的に「件数」が意識されているのか?””と考えた際、やはり単純である点が勝ります。

ここでは「件数」のように単純ではない「率」についてどのように活用してスタッフのホスピタリティを維持・向上させながら売上に直結する「かかりつけ薬剤師算定率」を最大限二活用する3つのステップを紹介します。

【ステップ1】

算出方法は皆さんが想像する通りですが、重要なのは「何に対する率か」という定義における目的別の分析期間の設定です。

【収益と市場選好度を示す】全体算定率

「算定率」=「かかりつけ薬剤師算定件数」/「処方箋枚数」✕100(%)

期間の設定
「期間」を売上増収を目的とする場合は月・年単位、回転率悪化によるリスクマネジメントを目的とする場合は週単位など、目的に合わせて設定することで分析の精度が上がります。

薬剤師別依存度

「かかりつけ薬剤師依存度」=「薬剤師〇〇のかかりつけ薬剤師算定件数」/「総かかりつけ薬剤師算定件数」✕100(%)

目的: 「一人に依存した状況」というリスクを回避するための指標です。特定のスタッフへの貢献度が〇〇%を超えた場合(算定可能スタッフ数を参考に設定)などは、業務の引き継ぎ・教育を強化すべき警告ラインと見なしましょう。業務はチームで取り組むべきことであり、一人に依存することは急な退職などのリスクヘッジを怠ることに他なりません。

【ステップ2】

「率」の目標設定。目標によるマイルストーンを明確化する。

具体的な目標値は薬局の地域性や規模により異なりますが、仮に「地域支援体制加算を取得するための最低ライン」を目標に設定してみます。

この場合の本質は「警告ラインを設定することでマイルストーンを明確化し、危機感を認識させること」です。
基本料1算定かつ年間3万枚の薬局であれば。60件/3万✕100(%)=0.2%となります。

件数目標(5件/月)では、達成後の努力が止まるか、逆に「まだ大丈夫」と危機感をボカしてしまいます。重要なのは、「もしこの『率』を達成・維持出来なければ、将来の売上はどうなるか?(地域支援体制加算2(40点)を取得できなければ年間1200万で減収)」を常に逆算することです。

また、裏を返せば、新規患者の99.8% は自局を選んでいないという事実を突きつけます。これは、あなたの薬局が、**まだ「非認知層(かかりつけ制度を知らない/意識していない患者)」「潜在層(かかりつけになってくれる可能性のある患者)」**に変える機会を逃し続けていることを意味します。また、「率」は「市場における自店舗の選好度」という、より本質的な指標と言い換えることもできます。したがって、目標設定は地域支援体制加算の維持だけに留まらず、「成長」を義務付ける指標を設定してください。

【ステップ3】

スタッフのホスピタリティ精神を「率」に結びつけるフィードバック

スタッフを怠けさせないためには、「件数」という結果ではなく、「率を上げた行動」に焦点を当てたフィードバックが不可欠です。

「件数」だけを褒めると、たまたま同意してくれた時のを褒めることになります。「率」に結びつく行動を褒めることで、スタッフは「この対応が患者に選ばれるのだ」と学び、ホスピタリティが業務の根幹になります。

  • 悪いフィードバック
    「今月も 〇〇 件達成。よく頑張った!」
     →目標達成したので、来月は手を抜こう
  • 良いフィードバック 
    「ここ数ヶ月 に比べ薬剤師Aさんの貢献率がアップしているAさんのヒアリング方法をみんなで共有しよう!その反面、最近Aさんへの依存度が50%超えている!!業務の引き継ぎ・教育を強化をしないと」

3【重要!誰も言わない「かかりつけ薬剤師」のデメリットと回避策】

導入文で言及した「注意すべきデメリット・留意点」をここで具体的に解説し、読者の懸念を解消します。「率」マネジメントはこれらのデメリットを最小化するために必須です。

特定の薬剤師拘束による「業務回転率の低下」と「スタッフの疲弊」

かかりつけ薬剤師算定件数だけを意識した戦略を行った場合、特定の薬剤師への業務集中が避けられません。「疑義照会で捕まってしまい担当患者の投薬に行けない」「特定の薬剤師でないと大声でクレームを言う困った患者」といった事態は、全体の回転率の低下を招きます。

しかし、前章でのステップ1で算出した「薬剤師別貢献度(依存度)」を活用することにより、この問題をある程度回避できます。

回避策: 貢献度(依存度)が警告ライン(〇〇%)を超えた場合、その薬剤師への新規のかかりつけ提案を一時的にストップし、他のスタッフに担当を分散させるようマネジメントが介入します。これにより、特定のスタッフへの負荷集中を防ぎ、薬局全体の業務バランスを保ちます。

患者情報の「ブラックボックス化」によるリスク

薬剤師の担当制が進むと、特定の患者情報がその担当薬剤師個人の知識やメモの中に留まり、「ブラックボックス化」するリスクが高まります。これは、担当薬剤師が不在の場合に対応品質が低下し、最終的に患者離れを招きます。

回避策: 「要件を満たした薬剤師であれば担当でなくても算定できる」という制度の原則を活かし、「依存度が高い患者情報ほど、チームで共有すべき」というルールを徹底します。具体的には、「薬剤師同士でペアで患者情報を共有する」「注意事項は薬歴の共通項目に必ず記載しておく」などの明確な情報共有ルールを設け、属人性を排除することで解決できます。

4まとめ:選ばれ続ける薬局へ。今日から始めるべき最初の一歩

かかりつけ薬剤師制度を「件数」という通過点で終わらせるのではなく、「率」という本質的な指標で捉え直すことが、処方箋枚数が減りゆく時代における薬局経営の生命線となります。件数を追うことは、スタッフの惰性を招き、患者に選ばれない薬局へと向かうことと同義です。 今日から「率」を追跡することで、組織文化を改善し、安定的な増収基盤を築きましょう。

 本記事で解説した3つの核心

処方箋枚数を守り、収益を最大化するための要点を再度確認します。

  1. 「件数」の罠から脱却せよ: 件数主義は、スタッフのホスピタリティ精神を失わせ、最終的に患者離れと処方箋枚数の減少を招く。
  2. 「率」は市場の選好度: 「率」で見ることで、かかりつけ薬剤師を調剤技術料に匹敵する安定収益として可視化し、新規患者を「非認知層」から「潜在層」に変えるための戦略を立てることが可能になる。
  3. 率による経営の最適化: 「全体算定率」と「薬剤師別依存度」という二つの率を追跡し、行動ベースでスタッフを評価・フィードバックすることが、意識改革とリスクヘッジの鍵となる。

今日から実行すべき最初の一歩

最初の一歩は、複雑なシステム導入や大規模な研修ではありません。まずは「現状を知る」というシンプルな行動です。

あなたの薬局が今日、最初に取り組むべきことは、 既存の処方箋データと算定実績を基に、「全体算定率」「薬剤師別貢献度(依存度)」を算出することです。

  1. 「全体算定率」を算出する:
    薬局の現状のホスピタリティと収益の機会損失がどの程度か、市場における選好度を把握する。
  2. 「薬剤師別貢献度(依存度)」を可視化する
    特定のスタッフに業務が集中し、急な退職で患者が一気に流出するリスクがどの程度潜んでいるかを数値で認識する。

これらの数値こそが、貴局の課題を明確にする「警告ライン」であり、意識改革と増収戦略をスタートさせるための設計図となります。
「件数」という過去の結果ではなく、「率」という未来への指標に焦点を当て、選ばれ続ける薬局経営へと舵を切りましょう。

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